- 2024-04-05
- 2024-04-10
LIVE 64 アメリカの国賓
米国のホワイトハウスは今年1月25日、岸田文雄首相が4月10日に米国を公式訪問すると発表しました。下は、その時のホワイトハウスのプレス・リリースです。 訳:ジョー・バイデン大統領とジル・バイデン大統領夫人は、2024年4月10日に、岸田文雄首相と岸田裕子夫人を公式晩餐会を含む米国公式訪問にお招きします。この訪問は、日米同盟のパートナーシップの永続的な強さ、日本に対する米国の揺るぎないコミットメント、そして世界における日本のリーダーシップの役割の拡大を強調するものです。 バイデン大統領と岸田首相は、日米同盟が進化する課題に対処し、自由で開かれた、安全で繁栄するインド太平洋地域と世界という共通のビジョンを推進する態勢を整えるため、政治、安全保障、経済、そして人と人との結びつきを強化する取り組みについて協議する。 ホワイトハウスから出ている公式の情報はそれだけですが、日本ではいろんな憶測合戦が始まっています。「首脳会談では、覇権主義的な動きを強める中国や対台湾関係、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援継続などが主要な議題になるとみられる」とか、林芳正官房長官が記者会見で「日米の緊密な連携を一層深め、強固な日米同盟を世界に示す上で大変有意義だ」と語ったとか。(岸田首相、4月10日訪米 国賓待遇、「不朽の同盟」誇示―米発表:時事ドットコム) どの報道も「国賓待遇」ということを繰り返し強調しています。アメリカが外国の要人を招待する時のランクには5段階ありますが、ホワイトハウスのプレス・リリースを見ると、Official Visit となっているので、上から2番目のランクです。1番上は、State Visit です。これが本来、国賓に相当するでしょう。 Head of State、つまり元首に適応されるランクですが、日本には、憲法にも法律にも元首という規定がないので、State Visit が適用されないのも仕方ないでしょう。Official Visit は、行政の長に適用されます。岸田首相は行政の長なので、ちょうどこれに当てはまります。ぎりぎり惜しいので、国賓並みじゃないかという思いを込めて、日本のメディアは「国賓待遇」という言葉を編み出したんですかね? 下の表によると、1番上のState visit が国賓で、上から2番目のOfficial visit が岸田首相の場合ですね。 State Visit の晩餐会のドレスコードはホワイトタイ、Official Visit の晩餐会の場合はブラックタイという違いがありますが、上のプレスリリースには a state dinner と書いてあるので、晩餐会だけは国賓になるのでしょうか?映像が出てくるのが楽しみですね。まさか間違えないでしょうが。State Visit を迎える礼砲は21発、Official Visit を迎える礼砲は19発なので、岸田首相は礼砲19発撃たれるはずです。 日本の報道では、日本の首相が”国賓待遇”で訪米するのは、2015年4月の安倍晋三氏以来だということも必ず言及されてます。2015年の安倍氏のアメリカ議会でのスピーチは、その後の日本の進路を大幅に変えたものとして歴史に残るものだと思います。その演説の中にこんな一節がありました。 Based on this track record, we are resolved to take yet more responsibility for the peace and stability in the world. It is for that purpose we are determined to enact all necessary bills by this coming summer. And we will do exactly that.訳:(これら実績をもとに、日本は、世界の平和と安定のため、これまで以上に責任を果たしていく。そう決意しています。そのために必要な法案の成立を、この夏までに、必ず実現します。) ここで安倍氏が言っている法案とは、(通称)平和安全法制のことです。安倍内閣は、その前年の7月1日、閣議決定により、戦後一貫してゆるがなかった「集団的自衛権の行使は違憲である」という政府見解を反故にしました。これがいわゆる解釈改憲です。 ”誰かが日本を攻めて来たら防衛する”というところまでは、政府には国民を守る義務があるのだから(憲法13条)、合憲であろうというのが政府見解でした。”誰も日本に攻めて来なくても、仲良しの国が攻められたら、日本から軍を出して攻撃することは可能だ”と解釈するのが、この2014年7月1日の閣議決定です。それを正当化する根拠が憲法にないことはよく分かっているので、安倍氏自らそれを「解釈改憲」と呼んでいました。 しかし、閣議決定だけではどうしようもない。法律にしないと実効性がない。安倍氏は、そんな法律を「この夏までに必ず作ります」とアメリカの議会で約束して帰って来ました。そして、同年9月17日、強行採決によって、そんな法律が出来ました。安倍氏はアメリカに対する約束をちゃんと果たしたのです。 まるで、アメリカに国賓待遇で招いてもらい、米国議会で約束をして、それをブーストにして違憲法案の成立に至ったかのような話の流れです。シナリオ・ライターがいたのかもしれません。何の約束にせよ、約束の相手を間違ってるのは明らかです。行政の長が、自国民に約束するのではなく、他国の議会で約束をするというのはおそらく日本政治史でも前代未聞でしょう。 岸田首相が、4月10日何を喋るのか、無事何事もなく、そつなくなんの言質も取られず帰ってくるのか、あるいは日本国民は安倍氏の二の舞を見ることになるのか、分かりません。 LIVE 64が、取り止めのない雑談になるのか、日本のお通夜のような集まりになるのかも、4月10日の岸田演説の内容しだいです。とりあえず時間だけ押さえておこうと思い、予定にいれたという次第です。参加要領は下記の通り。 実施日:2024年4月28日 実施時刻:午後1時 – 3時 参加費:無料 参加申込フォーム:https://forms.gle/FuRPAsx373pvfgKr9 投げ銭